誤錯行試

隙あらば自分語りです

自分を葬る

実家へ戻る前日に、最寄り駅で散歩をした。

土曜日の昼下がり、なんてことない日だった。家族連れが多い。

半分死んだような顔で歩く。もっとも、表情を頑張る気力が失われていただけで、心は少し、弾んでいた。商店街を、長くまっすぐの散る道を少しずつ歩く。だんだんと自分が知らないところにまでひらけてくる感じがした。しかしそれは、駅からまた離れることを意味していたから、歩けば歩くほど街は華やかさを失い始める。言い換えれば、ただの住宅街が続いていた。AOKIや吉野家やよく分からないカラオケ屋。まるで郊外だな、なんて思いながら、これが東横線から20分歩いた光景か、地元と大して変わらない、と謎のノスタルジーさえ感じていた。せっかくあるき続けたんだから、「何か」を持ち帰りたい、と謎の根性が働き、その後も歩いていた。

ふと、あるマンションの前で立ち止まる。マンションの前に新たな集合住宅が建設され始めていた。なんかいいな、と思って写真を撮る。スマホの画面に残った写真も「なんか良さそう」なものだった。そこ、どまりなのだ。プロトの差はその違いなのかな、などと適当なことを考えているとある女の子が近くを通った。マンションの入り口あたりで母親らしき女性と会話している。夕飯の下りだっただろうか、詳しい内容は今となっては失念してしまったが、とにかく母親と会話していた。

その光景に遭遇した時、なんとも言えぬ感情に襲われた。後悔?羨望?

ただ、後者に近いのかもしれない。なんとか表現するならば。別に頭がいいとかどうでもよくて、もう少しまともに人生を歩みたかったな、とは常々思うから。戻らない、戻れない頃を思い出したのかもしれない。